豊頃町の農業
本町に本格的な開拓の鍬が入れられたのは明治中期で、明治 30年(1897年)には本町の開拓に大きな役割を果たした二宮尊親(二宮尊徳の孫)が福島県から興復社一行を率いて二宮地区に入植しています。時を前後して町内各地に移民が入植し本格的な開拓が始まりました。以来、豊頃町の農業は、積雪や寒冷な気象条件にありながらも近代技術の導入、排水改良等の土地基盤整備を進め、今日では、日本最大の食料供給基地として発展してきた十勝の中核をなしています。
本町では、広大な土地資源を活かし、大規模で機械化された生産性の高い農業が展開されており、農家一戸当たりの平均耕地面積は42haと全国平均の26倍の規模であり、乳牛飼養農家1戸当たりの乳用牛頭数は120頭となっています。農家戸数に占める専業農家の割合は70%、第1種兼業農家の割合は27%で、専業経営が圧倒的に多い状況にあります。
本町の農業産出額は十勝全体の約4%を占める約94億円(16年)となっており、産出額に占める耕種部門の割合は48%、畜産部門52%となっています。耕種部門は、畑作物(小麦・豆類・馬鈴しょ・てん菜)と野菜、畜産部門は生乳、肉用牛の生産が主になっており、地域的には茂岩を中心とする中央部では耕種の比率が高く、高台部や太平洋沿岸部では酪農主体の経営になっています。
このように、豊頃町は日本有数の農業地帯として発展してきた十勝の一角を担ってきましたが、一方で、経営規模の拡大に伴う労働力不足や高齢化、後継者不足、農地流動化問題、また、最近、国民の関心が高い環境問題や食品の安全性など多くの課題を抱えています。
このような状況の中、平成11年に「食料・農業・農村基本法」が施行され、従来の生産性の向上、所得の確保から食料自給率向上や農業の多面的機能発揮、さらには市場原理の導入などによってこれまでの枠組みが変化していくことが予想されますが、豊頃町では豊かな大地のもとで先人が築いた基盤をもとに、国民の皆様に安全で高品質な食料を安定的に供給し、豊かな農村環境を維持していくための取組みが進められています。
農業経営体数と農業従事者数
本町の農業経営体数は、昭和55年~平成17年の25年間に、482戸から226戸に約53%減少しています。その推移は、十勝管内の平均よりも減少率が高くなっている傾向にあります。また、平成19年度から実施される『品目横断的経営安定対策』では、地域の担い手を中心とした農業構造の改革がなされることから、今後一層の減少が続く恐れがあります。
農業従事者数は、昭和55年~平成17年の25年間に、1,555人から583人に約64%減少しました。その推移をみると、平成2年以降の減少度合いが大きくなっています。
昭和55年 | 昭和60年 | 平成2年 | 平成7年 | 平成12年 | 平成17年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
農業経営体数
|
482
|
456
|
401
|
330
|
279
|
226
|
農業従事者数
|
1,555
|
1,408
|
1,235
|
1,025
|
691
|
583
|
(『十勝の農業』より抜粋)
畑作
本町の農作物の状況を見ると、飼料作物である牧草の作付けが、面積・収量とも圧倒的に多くなっています。
畑作4品の作付面積は、安定した収量が見込める小麦・馬鈴薯・甜菜は、近年ほぼ同じ面積で推移していることから、天候に左右されやすく、価格の変動が多い豆類の作付けが依然多い傾向にあります。
また、平成17年産の大根の作付面積は 104ha、収穫量も5,000tを超え、本町における重要な作物として定着していますが、平成6年に269.5haあった作付面積が年々減少しています。
作物 | 作付面積(ha) | 収量(kg/10a) | 収穫量(t) |
---|---|---|---|
小麦 | 1,310 | 460 | 6,020 |
馬鈴薯 | 900 | 3,880 | 34,900 |
大豆 | 295 | 281 | 830 |
小豆 | 593 | 273 | 1,620 |
いんげん | 494 | 296 | 1,460 |
甜菜 | 783 | 5,950 | 46,600 |
スイートコーン | 119 | 1,010 | 1,200 |
大根
|
104
|
4,885
|
5,080
|
デントコーン
|
866
|
5,200
|
45,000
|
牧草
|
6,040
|
3,510
|
211,900
|
(十勝の農業 平成17年版)
畜産
本町の畜産は、家畜飼育頭数から見ても、乳牛を中心とした酪農経営です。乳牛の一戸平均の飼育頭数は、昭和55年(1980)では約35頭でしたが、平成17年(2005)では約120頭となっており、酪農における経営規模拡大が進んでいます。また、畑作農家への肉牛の導入も定着しており、畑作物への堆肥還元が進んでいます。
近年においては生乳の生産出荷抑制の影響により全体的に生乳が減産されていますが、畜産部門での農業産出額は毎年上昇を続け、平成16年には49億円に達し耕種部門の産出額を上回るほどになっています。
酪農における一戸当たりの飼養頭数は年々増加し、規模が大型化していることから、フリーストール牛舎、ミルキングパーラー、コントラクター、酪農ヘルパーの導入が盛んになっており、労働力の省力化が図られています。
また、肉用牛については、昭和55年の一戸平均の飼養頭数では約66頭でしたが、近年、肉牛の市場価格が高値で推移していることから、平成17年には約104頭まで飼養頭数が増加しており、今後一層の経営規模拡大が進む傾向にあります。
乳牛 戸数 | 乳牛 頭数 | 肉牛 戸数 | 肉牛 頭数 | |
---|---|---|---|---|
昭和55年
|
215
|
7,459
|
37
|
2,448
|
昭和60年
|
180
|
8,160
|
30
|
4,350
|
平成2年
|
160
|
9,000
|
50
|
5,630
|
平成7年
|
120
|
8,920
|
80
|
6,920
|
平成12年
|
90
|
8,870
|
52
|
3,840
|
平成17年
|
80
|
9,590
|
46
|
4,780
|
(『十勝の農業』より抜粋)